草薙レディースクリニック院長 草薙鉄也

  • 略歴
  • 昭和51年 札幌医科大学卒業
  •   55年 札幌医科大学大学院(産婦人科)修了
  •      札幌医科大学附属病院勤務
  •   61年 札幌医科大学産婦人科講座講師
  •   62年 函館五稜郭病院産婦人科医長
  • 平成 4年 札幌鉄道病院産婦人科医長
  •    6年 札幌鉄道病院産婦人科主任医長
  •   13年 4月 草薙レディースクリニック開設
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  • 所属学会・資格
  • 日本産婦人科学会 産婦人科専門医
  • 日本臨床細胞専門学会 細胞診専門医
  • 日本産婦人科 乳癌学会 乳房疾患認定医
  • NPO マンモグラフィ検診精度管理 中央委員会 マンモグラフィ読影認定医、乳房超音波検査実施・判定医
  • 日本女性医学学会認定 女性ヘルスケア専門医
  • 母体保護法指定医
  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本乳癌検診学会 所属
  • 日本骨粗鬆症学会 所属
  • 日本日本女性医学学会(旧 日本更年期学会)所属

質の高い生活(QOL)と女性のトータルケアを目指して

 女性は少女期、思春期、性成熟期、更年期、老年期を過ごし、その間に罹る病気の半分は産婦人科疾患です。現在は食生活の向上と医療の進歩によって女性の平均寿命は85歳ですが、健康に恵まれ、快適に過ごせる寿命すなわち健康寿命は今も昔も50歳までで、その後は更年期障害に始まり、尿失禁、性交障害、高脂血症、骨粗鬆症、動脈硬化症による心臓病や脳いっ血、アルツハイマー病等の病気に罹ることが多くなります。これは女性の健康を守ってきた女性ホルモンが閉経後に失われることが原因であり、その為にこれらの疾患に重複して罹患する女性が増えます。そこで閉経後女性の質の高い生活を維持するには健康のトータルケアが必要です。
当クリニックでは従来の婦人科診療(子宮・卵巣・乳房の癌検診や子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣腫瘍・不妊症・性感染症など)に加えて、骨粗鬆症、高脂血症、動脈硬化症等の生活習慣病の予防も目指した、婦人科医ならではの、きめ細やかで安堵感のある診療を実践しています。

更年期障害をなんとかしたい!!

 更年期障害の症状は、ほてり、発汗、動悸、冷え、イライラ、不眠、肩こり、腰痛など多彩です。その原因が女性ホルモン不足ですから、閉経後の5~10年間の治療としてはホルモン補充療法(HRT)が大変良く効きます。しかしHRTを望まない方、乳ガンや血栓症等のHRTが受けられない方には漢方療法や自律神経安定剤そしてカウンセリング等が効果的です。また症状が重症な時にはHRT、漢方療法、自律神経安定剤を組み合わせて治療することも必要です。

骨粗鬆症と女性ホルモンとの関係について知っていますか?

 骨粗鬆症は更年期以降の女性に起こりやすい病気で、その原因は女性ホルモン不足によって骨を溶かす破骨細胞の働きが過剰に活発になってしまう為です。その結果、閉経後の10年間で背骨の骨量は15%~20%も減少、大腿骨頚部(股関節)も15%減少します。これは女性が一生で失う骨量の約半分に相当するので、この時期に骨量の減少を防ぐことによって将来の骨粗鬆症を予防出来るので、閉経後の10年間は絶好のチャンスとも言えます。

ホルモン補充療法は心配ありませんか?

 平成14年7月17日に米国保健局(NIH)から全世界に向けて、HRT大規模試験の結果が報告されました。
それは、HRTは有害とするショッキングな内容で、その根拠として心臓の冠動脈疾患が29%、脳卒中が41%、浸潤乳癌が29%それぞれ増加した事を挙げています。これについて日本産婦人科学会や更年期医学会は以下の様に述べています。
今回の大規模臨床試験の対象の3分の2が肥満や超肥満であり、また喫煙率50%、高血圧35%、すでに血栓症(アメリカ白人女性の血栓症発生頻度は東洋人の10~20倍と言われている)を起こして再発予防薬(アスピリン)内服中19%含まれていることから、日本人とは体格や生活習慣そして遺伝素因(乳癌は日本人の6~10倍も多い)が異なるだけでなく、血栓症(脳出血、脳血栓、肺栓塞、心筋梗塞)の原因である動脈硬化症、そしてその動脈硬化症の原因となる肥満、高血圧、高脂血症、喫煙などの頻度が高いアメリカの閉経後女性の結果をそのまま日本人に当てはめて良いのか疑問が残るとしています。しかし日本でも生活様式の欧米化に伴い肥満や高脂血症は増加していることも事実です。
 女性ホルモンは更年期障害に有効なだけでなく、骨量減少の抑制、コレステロールと悪玉コレステロールの減少や善玉コレステロールの増加そして血管伸展性の増加などによる抗動脈硬化作用があります。また活性酸素による細胞障害を阻止する抗酸化作用もあり、今回の大規模臨床試験では子宮体ガンや大腸ガン予防効果も確認されました。しかし動脈硬化の結果すでに血管に油の固まり(粥腫)や血栓があるような場合、HRTで使用する女性ホルモンの種類によっては血栓症を起こし易くなると考えられる為、HRTの適応や使用する女性ホルモンを慎重に選ぶべきと考えます。
結論としては、HRTの適応ではない女性にはHRTは用いないと言う原則を守ることが重要と言えます。